昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話

翌朝、二日酔いになった葉月は眠りから覚めると、頭痛がして頭を押さえた。

そのまま枕元にあったスマートフォンで時間を確認し、ベッドから降りようとしたところで、「うわっ」と言う声と共に掛け布団ごと床に転げ落ちた。

「いったあ……」

 落ちた衝撃で完全に目が覚めた葉月はゆっくりと起き上がった。

 昨日は朱里とつい飲み過ぎてしまった。

 普段は全然飲まないのに、翔が自分の記憶を忘れてしまったことがショックで、やけ酒をしてしまったんだ。

「今日も仕事だ……こんな状態になるんだったら、あんなに飲まなければよかった」

 後悔をしながらも、葉月は仕方なく出勤する準備を始めた。

最初に洗面所に行き歯磨きをしながら、ふと翔のことを考えた。

 昨日、まだ飲む前に、前世の記憶を思い出す方法について調べたんだ。

そしたらいくつか方法は出てきたけど、本人が自主的にやらないと思い出せないものばかりで、自分が働きかけて思い出させる方法は葉月が見つけた限りでは一つも見つからなかった。

 このまま、翔との関係は赤の他人のままで終わってしまうんだろうか。

 考えている途中で、葉月は持っていた歯ブラシを床に落とした。落とした歯ブラシを拾おうとして屈むと、再び頭痛がして頭を押さえた。

「うう……」

 頭は痛いし、吐き気もする。でも、二日酔いで会社を休むわけにはいかない。葉月は落とした歯ブラシを拾い、洗ってから再び歯磨きをして、顔を洗った。

 換気のために掃き出し窓を開けると、寒い風が入ってきた。寒かったが風がいい酔い覚ましになるようだった。

しばらく風に当たろうと思った葉月はベランダに出た。

 もう、翔のことは諦めた方がいいのかな。方法がなければ記憶を思い出すこともないだろうし。

そう思いながら空を見上げると、青い空に白い雲がゆっくりと流れているのが見えた。

 そう言えば前にここで、翔と一緒に夜空の星を眺めたっけ。

あの時は『一緒に夜空でも見ませんか?』なんて、急に何を言い出すんだろうと思ったけど、今思えば翔と一緒に星を見るだけでも楽しかったな━━。

やっぱり、諦めちゃ駄目だ。まだ方法はあるはず。

とりあえず、今できることからやればいいんだ。月野のアドバイス通り、まずは高校に行こう。

それで翔に今までのことを全て話せば、可能性は少しでも、記憶を思い出すきっかけになるんじゃないかと思う。

話すだけで思い出すとは思わないけど、今はそれしか思いつかないし、やれるだけやってみよう。

 葉月はそう決意すると、ベランダから出て出勤の準備を続けた。

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