冷たい風が吹き、真っ白い雪が降る。
記録的な寒さとなったその日、
1人の女性が墓前にしゃがみこんでいた。

コートは雪でぐっしょりと濡れ、
髪にもはらはらと雪が積もっている。
それなのにも関わらず、女性は笑顔で
墓に供えられている花を取り替えながら
何かを語りかけていた。

その墓前に供えられているのは、
色とりどりの花と1枚の写真。

女性は写真を取り上げて
それを胸に押し当てる。

そして哀しげに笑い、その場を去った。




風が吹き、写真を空に巻き上げる。

1人の少年が冬空の下で微笑んでいる、
何気ない日常を切り取った写真だった。