「あのさ、」
私が話している間に適温となったコーヒーを一気に飲み干した葉山くんはやっと口を開いてくれた。
「最初から、知ってたよ」
「え?」
瞬きも忘れて葉山くんを凝視する。
「告白してくれた時、校舎の影にいる清水たちが見えたから。それで彼女たちの表情が佐野を応援するというよりは、完全に楽しんでるようだったから。ああ、そういうことかって」
「嘘…」
「そこで断ったら、佐野の立場がないかなって思った」
「……」
優しすぎる。
私の立場のことを心配してくれて、好きでもない女の子からの告白を受け入れてくれた。その場凌ぎの対応であろうと、その優しさに胸が締め付けられる。
「こっちこそ黙ってて、ごめんな」
「葉山くんが謝ることはなにもないよ。全部私が…」
「でも俺、佐野とはこれからも一緒に居たいし、彼女のままで居てほしい。ダメかな?」
即座に首を振る。
そんなの決まってる。
「私も葉山くんの彼女で居たいよ…」
「ありがとう」
ゆっくり葉山くんが拒否を縮めてきて、彼のサラサラの前髪が私の額に触れた。
「今日、ここから、俺たちは本当の恋人同士だね」
甘い声が、すぐ近くから耳に響いた。


