その手をぎゅっと掴めたら。


張り切っていた気持ちが急に萎み、ゆっくりと駅に戻る。


「佐野?」


呼ばれた名前にドキリとして振り返れば、息を乱した葉山くんが駆け寄ってきた。


「後ろ姿が見えたから」

「あ、うん」


素っ気ない返事をしてしまう。

待って、まだ心の準備がーー!


白いシャツにピンクのカーディガンを羽織った彼は爽やかで、可愛らしさとかっこよさが混在している。ジーパンのポケットに手を入れて立つ姿は絵になり、すれ違う人の視線を集めている。

素敵だ、素敵すぎます!



「声、掛けにくかった?」


気付かれてましたか…。気まずい。


「はい…」

「家が近所だからたまたま会っただけ。それで本屋まで一緒に来た」


こくこくと頷く。
分かってる。

ただ一時の彼女役を担っているだけの私にあれこれ聞く権利はないのだけれど、葉山くんは教えてくれた。


「幼い頃から知っているから、割とよく話すけど。ただ、それだけ。女の子だと意識したこともないよ」


「……あんなに可愛いのに?あの綺麗すぎる生足を見て、なにも思わないの?それに2人ともすごくお似合いで…」


「……」


しまった、つい本音が…。
気まずくて下を向く。