その手をぎゅっと掴めたら。


前田先生がもう一度呼び掛けるが誰一人として反応しなかった。

葉山くんの方を見ると、頬杖をついて窓の方を見ている。


「…はい!」

と、後ろから声がした。


振り返ると凛ちゃんが手を挙げていた。


「お。清水、出てくれるのか」

「いえ、私は塾があるので無理です。だから佐野さんがいいと思います!塾に行っていないし、部活も入ってないので土曜日も空いてると思うし。ね?」


ーーね?

そう問われたはずなのに、選択権など与えていないかのような鋭い視線を向けられる。圧がすごくて、思わず頷いてしまいそうになる。


掃除とか、先生の手伝いとか。
私にでもできる裏方の仕事であれば頷いていただろうけれど、相談会は無理だと踏み留まる。


そして首を振って否定すれば、凛ちゃんの舌打ちが聞こえた。


「おいおい、清水。他者を推薦しろとは言ってないぞ。こういうことは、自主性が大切なんだ。誰かいないか?」


前田先生は無理矢理に押し付けるようなことはせ
ず、凛ちゃんの発言をさらりと流してくれた。


「うっざ」
そう私だけに聞こえるように呟かれた言葉に、泣きそうになる。


彼女から逃げるように前に向き直った。