その手をぎゅっと掴めたら。


高校生活の友達第一号。
始業式の日、初めて声をかけてもらった時、どんなに嬉しかったか、たぶん青山さんには伝わらないし、亜夜にも本当の意味では分かってもらえないと思う。


クラスの中で己が空気であると自覚した者だけが分かる、苦しみ。そこから私を解放してくれた凛ちゃんは、私にとっての希望だ。

多少のことでは彼女を嫌いにはなれないし、はっきり言って、今も嫌いではない。おかしいかもしれないけれど。


「おーい、真奈ちゃん。考え事?」

「あ、すみません」


私の目の前で手をひらひらさせた青山さんは、もう一方の手でカップを傾けながら笑う。


「たくさん考えて、悩めばいいよ。一度きりの人生だもの、大切に過ごさないとね」


「青山さん…」


「大丈夫。失敗したって、やり直せるからね」



やり直せるーーその言葉で、気負っていた力がすとんと抜けた。


ああ、青山さんって。
青山さんの言葉って、凄い。