その手をぎゅっと掴めたら。


放課後、亜夜とカフェで食事をし、たくさん罵られた。散々、阿呆だと罵倒され、それから書店で分かりやすい英語の教科書を選んでくれた。


「真奈のとこは進学校だから、進むペースが速いね。うちはまだ3章だもん」


私の部屋で教科書をペラペラ捲りながら亜夜は溜息をついた。

我が家は1階の喫茶店と、その奥にキッチン、食事をする狭いスペースがある。そして2階はお風呂などの水回りと、亜夜と私の部屋だ。部屋と言ってもカーテンで仕切られただけの簡素な作りだけれど、快適に暮らせているかな。


「まぁ小テストの範囲が決まっているだけ、マシだよね」


「20ページかぁ。うん。覚えられなくもないよ、真奈なら」


「……やる」


「よし、とりあえず教科書と参考書を見ながら、文法のおさらいしな。その間に単語カードを作っておくよ」


受験の時は単語カードに英語と訳を書き写して、何度も捲って暗記したっけ。単語カードを作るまでがまた時間がかかる作業だけれど、亜夜が引き受けてくれた。


「ありがとう!」


3人には負けられない。
英語には苦手意識はないし、努力は無駄にならないーーと、信じたい。