その手をぎゅっと掴めたら。


トイレに寄って行くと言う葉山くんと別れ、教室に向かうと下駄箱で凛ちゃんを見つけた。早紀ちゃんも一緒だ。


「凛ちゃん!早紀ちゃん!おはよう」

足を止めて勇気を振り絞り、声を掛ける。


「……」

「……」


振り向いてくれたものの2人から返事はなく、凛ちゃんの冷たい視線が突き刺さる。反対に早紀ちゃんは明後日の方向を見ていた。


「葉山くんとのこと、怒っていたらごめんなさい」


「……」


「ごめんなさい」


これは何に対する謝罪だろうか。
葉山くんと付き合うこと自体が悪いことではないけれど、それで2人に嫌な思いをさせているのなら謝るべき?



「なに謝ってんの。上からで、むかつく」

「上から?そんなつもりはないよ!私は2人と仲直りしたくて」


またいつものように、笑ってバカな話をしたいだけなんだ。


「じゃぁさ、またゲームしよ」


早起きが苦手な凛ちゃんが、朝から楽しそうな表情をしている。