その手をぎゅっと掴めたら。


一度口に出した言葉は取り消せない。
分かってはいるけれど、葉山くんの記憶から抹消したい。

はぁ…。


「君が時間あるなら、デートでもする?」


「え?」


「割り勘で」


「わ、割り勘で」


まさか葉山くんから誘ってもらえるとは予想外で、声が震える。しかも出掛ける、でなくデートって誘ってくれた。



「どっか行きたいところある?」

「あ、うん!」


ありがとう!亜夜!
昨夜に亜夜がリサーチしてくれていなかったら、なにも答えられなかったよ!


「先月オープンしたカフェに行きたい!」

「うん、そこにしよう」


あっさりとデートの約束をすることができて、内心ガッツポーズだ。
手を払われたことにチクリと胸が痛んだが、忘れることにした。