その手をぎゅっと掴めたら。


気遣いは嬉しいけれど、でも…。

今日も奢ってもらうわけにもいかないと、黙って頑な葉山くんの手をとる。



しかし、


一瞬だけ触れた手が、強引に払いのけられた。


「あ…」


勢いよく100円玉が手から飛び出し、床に転がる。


「…悪い」

「大丈夫!こっちこそごめんね」


さっとお金を拾うフリをして葉山くんから距離をとる。


やっちゃった…。


気安く異性の手に触れようだなんて…考えなしのバカだ。
ただその手に硬貨を握らせたかっただけと、言い訳したいが、そんな雰囲気ではなかった。

うん、なかったことにしよう。


「確かに彼氏が彼女に奢ることは普通かもしれないけれど、私たちは高校生だよ?学生のうちは割り勘くらいがちょうどいいと、私は思うの」


気まずくならないよう、敢えて葉山くんの目を見て言う。

ごめんなさい、葉山くん。