その手をぎゅっと掴めたら。


どうにか気持ちを落ち着かせて後を追うと、葉山くんはブラックコーヒーを買っているところだ。


「どうぞ」


自動販売機のボタンが点滅していて、100円が既に投入してあった。


「ありがとう」


少しだけ迷ってから、レモンティーのボタンを押す。

自動販売機の脇にあるベンチに座り長い足を組んだ葉山くんは私を見上げて「座れば?」と言う。


2人掛けのベンチ。

促されるままに座ってみたけれど、肩が触れてしまう。もちろん友達同士であればなんとも思わないだろうけれど、今の私には近すぎて鼓動が速い。


「あ、お金を返すね」


静かなままでは鼓動の音が彼にまで届いてしまいそうで、ほんの少しボリュームを上げて言う。

今日は忘れずに持ってきたお財布からお金を取り出しても葉山くんは受け取ろうとはしなかった。