その手をぎゅっと掴めたら。


なんとなくそんな気がした。
けれど葉山くんはそれには答えず、ぐっと大きく伸びをした。


「眠気覚しにコーヒーを買ってくる。君の分も買って来ようか?」

「あ、うん。一緒に行ってもいい?」


葉山くんに問えば、立ち上がった彼は首を振った。

えっーー?ダメってこと?

焦って、上手く言葉に出せない。


「彼女なんだからいちいち聞くなよ。嫌なわけないだろ」

「……」


いつものように私の返答など待たずに彼は歩き出す。

お願いだから、振り返らないでと願う。

急に身体中が熱を帯び、鼓動が速くなった。
鏡を見なくても今、自分がどんな顔をしているかは容易に想像できる。きっと真っ赤で、照れを隠せずに顔に出ているだろう。

恥ずかしい…。


"嫌なわけないだろ"
好きだと言われたわけでもないのに、その言葉ひとつでいっぱいいっぱいだ。