その手をぎゅっと掴めたら。


葉山くんがいつもお昼を食べている場所は、体育館裏にあるベンチだった。

木陰になっていて、屋根もあり雨も防げる。


「弁当、手作り?」

3人掛けのベンチの端と端に座り、中央にお弁当を広げた。栄養バランスが考えられた彩りの良いおかずたち。

「ううん、親友に作ってもらってるの」

「うちの学校の子?」

「違う高校の子。一緒に住んでるんだ」

「2人で?」

「そうだよ。うち離婚してて、父は単身赴任なの。はーー」


葉山くんは?と聞こうとして、首を振る。
あまり詮索はよくないかな。


「俺は両親と3人で住んでる。今度遊びに来る?」

「え、いいの?」

葉山くんのプライベートを教えてもらえただけでなく、お誘いまで?


「いつでもどうぞ」

焼きそばパンを器用に食べながら、自然に答えてくれた。