その手をぎゅっと掴めたら。


「真奈、ちゃんと話して」


青山さんと別れた日から、もう一つ変わったことがある。それは葉山くんが私を名前で呼ぶようになったことだ。

私も"北斗"と呼ぶことにしたけれど、何せ恐れ多くて圧倒的に"葉山くん"と呼ぶ回数の方が多い。


「そんな意地悪を言わないでよ」


ゆっくりと席を立ち、葉山くんの隣りへ中腰で移動する。


やましいことなど一つもないけど。
葉山くんのことを相談したり、青山さんには格好悪いことばかり話だと思うから、敢えて葉山くんに伝える必要はないよね。

青山さんは大人だったけれど、本当は大学生でなく中学生で時が止まったままだったのだ。自分より年下にアドバイスを貰っていたわけか…それはそれで複雑だから、やっぱり話したくない。


「観覧車が終わったら、ジェットコースターに乗りたい!」


「そうやってすぐ話を逸らす…ジェットコースターは苦手じゃなかったの?」


隣りに座った私にもたれかかってきた葉山くんは耳元で問う。

くすぐったくて、離れようとしたけれどガッチリ肩を掴まれた。


「…苦手だけど、手、繋いでくれるでしょう?」


「もちろん」


躊躇うことなくぎゅっと手を握ってくれた。