繋がれた手はそのまま、葉山くんは私から距離をとり、交差点を見つめる。
「…分かった。行こう」
「うん」
大きく深呼吸をした葉山くんは交差点に向かって歩き出す。その勇気を認めたかのようにタイミングよく青信号に変わり、立ち止まることなく、葉山くんは一本目の白線を越えた。
2時間半、構内で待った私の身体は相当冷えているはずなのに、それよりもずっと葉山くんの手が冷たい。まるで血の通っていない人形のようだ。葉山くんの手は震えている。
固く繋がれた手から、私の熱が彼に流れればいい。
ゆっくりではあるが確実に、前へ進んでいる。
時折、俯き加減になる葉山くんは唇を噛み締め、血が滲み始める。
そっと空いている葉山くんの左側を見つめる。
きっとそこには青山さんがいるはずだ。
「…、この辺りで、突っ込んでくるトラックが見えたんだ」
ちょうど真ん中あたり立ち止まった葉山くんは私だけに聞こえる小さな声で言う。
「俺が、彼を掴めれば、あんな形で…」
「悪いのはトラックでしょう。葉山くんのせいではないよ」
私は歩き出す。
本当は共に悲しみたいけれど、信号は待ってくれない。
私につられるようにして歩き出した葉山くんは返事をしてくれなかった。


