その手をぎゅっと掴めたら。


恋も友情も、おまけに勉強も上手くいっている生徒はこの世に何人いるのだろう。要領の悪い自分に悪態をつきながら、下を向く。


結局、放課後まで凛ちゃんたちと話せないまま孤独に過ごした。またひとりに戻ってしまった。

そして噂を聞きつけた他クラス、いや学校中の生徒が廊下から私を覗いていた。女子だけでなく男子生徒の姿も多い。


ああ、あんな奴なんだ。
平凡すぎじゃん。
本当にあの子?


嫌でも聞こえてくる負の言葉を、笑って蹴散らせればいいけれど。残念ながら私にはそんな強さはない。


早く帰ればいいものの、廊下で、校門で、注目を浴びることが嫌でトイレの個室に逃げた。みんなが帰った後、そっと帰ればいい。

あれ?

今朝の私は自信満々に"屈しない"と葉山くんに宣言したはずだけれど、今とっている行動はそれとは正反対なものだ。

威勢のいいことを言っておいて、結局は逃げ出しているなんて。昔と、なにも変わってないな。