その手をぎゅっと掴めたら。


手を取られて
ぎゅっと、強く強く握られる。


痛いほどに握られた。


想像以上に冷たい手が、私の体温を奪う。


「……佐野のコーヒー、俺も飲みたい」


強引に手を引っ張られて立ち上がった私は、葉山くんの胸に顔を埋めるかたちになる。


「親友を失った現場にもう一度行くことは怖いし、その場所を通ることで今度は君を失ってしまうのではないかと妙な胸騒ぎがするんだ」


「……」


今までよりもずっと近い距離に葉山くんがいる。



「でも君が俺以外の誰かの腕の中にいる姿を想像するだけでも、辛い。自分でも、どうしたらいいか…分からない」


ーー例え君が別れたいと言っても、それでも佐野が生きてさえいてくれれば、俺はそれで良いんだって…。

先程の言葉とは矛盾が生じるけれど、たぶんどちらも葉山くんの本心なのだと思う。

それほどに南ヶ丘は葉山くんから冷静さを奪う場所なのだ。


「迷うくらいなら、一緒に進もう。生きていく以上、葉山くんより先に死なないとは約束できないけれど。死ぬことになっても、今まで生きてきて良かった、楽しかった、後悔はないわ、って笑って死ねる思い出を葉山くんと作らせてよ。そうでなきゃ、私は死んでも死にきれない」


私も青山さんのようにこの世を彷徨うことになってしまう。


「……」


「まず最初の思い出として、私のコーヒーを飲んで」


青山さんと、一緒に。