こんな状況でも、まだ秘密を守らないければいけないのだろうか。
青山さん、帰っちゃうよ。もう二度と会えなくてもいいの?
通行人の視線など気にせず、その場に崩れ落ちた。
地面に雫が落ちる。
毎日、毎日、泣いた。
青山さんの1年間を聞いたあの日から、涙腺は崩壊していて、ご飯を食べながら、お風呂に入りながら、ベッドの中で、いたるところで泣いてしまっている。
青山さんの想いは、私には重すぎるんだ。
「……佐野、」
静かに名前を呼ばれる。
「……ひとりにしてごめんね」
見上げれば申し訳なさそうな顔をした葉山くんが立っていた。
「…また友達の声が聞こえて戻ってきた?」
葉山くんの家を訪ねたあの雨の日のように。
「聞こえないよ。俺の意志で、戻ってきたんだ」
そっと、葉山くんは私の手をとった。
彼の右手と、私の左手が触れた。


