その手をぎゅっと掴めたら。


青山さん。どうしよう。
葉山くん、戻っちゃうよ…。


腕時計を確認すれば、16時を回っていた。


後1時間もある。大丈夫、まだ間に合う。


だってさの喫茶はもうすぐそこじゃないか。


「お願い、前に進んで。葉山くんにとってあの道は辛いものだって、分かってる。でも進まなきゃ。いつまでも逃げていたって、青山さんは帰ってこないんだよ」


そして誰よりも、青山さんが進んで欲しいと願っているんだ。


「…怖いんだ」


「だから、私も一緒に渡るから!お願い、一緒に…」


葉山くんが下げていた斜めかけバッグのショルダー部分を引っ張る。


力づくでも連れて行くって、例え嫌われても連れて行くって決めたんだ。


葉山くんはまだ青山さんの事故と向き合えていないと、そう思っていたから、踏ん張った。


だけど、


「またあの道を渡って、今度は、君を失いそうで怖いんだ」



意外なことに葉山くんの口から出た言葉は、"過去"でなく"現在"に対する不安だった。