その手をぎゅっと掴めたら。


12月の最終金曜日。


2人は雨粒に制服を濡らしながら、大通りを歩く。


そして青信号になったばかりの交差点を渡り始める。


「なぁ、北斗」


前を歩く青年は親友の名前を呼びながら、後ろを振り返る。


ーーしかし、北斗と呼ばれた青年は目を見開き、傘を手放す。


咄嗟に、右手を、伸ばした。



「危ない!」



北斗はそう叫び、

状況理解できないままもう1人の青年も、彼に向けて手を伸ばす。


必死に伸ばした。


だけれど、2人の手が触れる間もなく、

猛スピードでカーブしたトラックが、青年の身体を突き飛ばす。


風に煽られた傘が宙を舞った。



尻餅をついた北斗は青年に再び手を伸ばしたが、目の前に広がる光景は悲惨なものだった。


突き飛ばされた青年は打ちどころが悪く、即死。


別れの言葉もないままに逝った。



それは青山瞬が私に語った、終わりで始まりの物語。