その手をぎゅっと掴めたら。



「……親友は、5年前に亡くなったんだ」


「え…」


その言葉を発すると、葉山くんは今にも泣き出しそうな哀しい顔をした。


「親友はーー瞬は、俺が見殺しにして、俺の目の前で息を引き取った」


瞬(しゅん)。
その名前を聞いた時、脳内を一気に情報が駆け巡った。


「……」


口を開こうとしたが、震えて上手く言葉にならない。


テニススクールに葉山くんを誘ってくれて、英知くんの憧れの人。

たまに葉山くんの口から出る"親友"は、"瞬さん"のことだったんだ。

瞬さんは、さの喫茶の常連でトートバッグを持っていたから、同じものを持っていた私にーー葉山くんは特別な何かを感じてしまった。


私のトートバッグに、親友との思い出を重ねたのかもしれない。