その手をぎゅっと掴めたら。


葉山くんは分かりやすい場所で待っていてくれたけど、その隣りには生徒会長の姿があった。

なにを話しているかは分からないが、葉山くんは笑っていた。

初めて学校の下駄箱で2人が一緒に居るのを見かけた時からそうだ。人前であまり笑わない葉山くんだけれど、新山さくらさんの前ではよく笑う。


彼女には心を許していると分かってしまったから複雑な心境になる。

早く2人を離さなければと早足で近付けば、生徒会長は言った。


「もう北斗とは、此処に来られないと思ってたわ」


しかし私に気付いた葉山くんはそれには答えず、生徒会長も話題を変えた。



「あら、可愛いスカート。あなたによく似合ってる」

「生徒会長のワンピースも可愛いです」


膝丈のワンピースを着た生徒会長には色気があって、同性の私でも見惚れてしまう。


「ありがとう。2人の邪魔をしてはいけないから、もう行くわ」


「はい、また」


近くにいたクラスメートに駆け寄る生徒会長を見送る。

葉山くんと虹ヶ丘ランドに来たのは親友だけでなく、生徒会長と一緒だったのだろうか。

なんでさっきその話題が出た時に教えてくれなかったのだろう。


「顔色は良くなったね。飲み物を買いに行こう」

「うん。あっちのアイスもいいなぁ」


聞けばいいのに。やましいことはないと分かっているのに。葉山くんの過去に嫉妬してしまう情けない自分を隠して、お店の看板を指差した。