その手をぎゅっと掴めたら。


高所恐怖症ではないから、上っていく道のりは耐えられたけど、猛スピードでの落下の瞬間は悲鳴を上げた。

もちろん葉山くんが白目を剥いているかを確認する余裕はなかったけれど、こんな時でも葉山くんは澄ました顔をしていたのだと想像する。


「お疲れ様でしたー」

係員の陽気な声を聞き、地面に足をつけた瞬間、やっと生きている心地がした。


「気持ち悪くない?」


俯き加減になっていた私の顔を覗き込んだ葉山くんは髪ひとつ乱れておらず、反対にこちらが驚いてしまう。

私の彼氏はジェットコースターに乗っても清々しいままですか?


「もう大丈夫。でも喉がカラカラだよ」


大声で叫んだ代償として、口内の水分が全てなくなり乾燥していた。


「なにか飲もう」

「その前にトイレ行ってくる。酷い顔でしょ?」

「ううん。いつも通り可愛いよ」

「…あ、ありがとう」


葉山くんはそう言ってくれたけど、鏡に映る私の髪はボサボサで、前髪はオールバッグ状態。

せっかく桃色のセーターに紺色の大きなリボンがついたロングスカートという私からしたら精一杯のおしゃれをしてきたのに、表情も優れない。

ああ、もっとメイクを濃くしてきた方が良かったかな。少し後悔しながら、葉山くんを待たせても申し訳ないので、髪を整えてリップだけ軽く塗って外に出た。