その手をぎゅっと掴めたら。


用件は意外なことだった。

「落書きのこと、前田先生に告げ口したのは私よ」


眉を上げて少し怒った表情で生徒会長は言った。


「職員室前にアンケートボックスが置いてあるじゃない。みんなに自由に要望とか書いてもらえるように置いてあるのだけど、そこに匿名で手紙が入れられていたの。1年生の子がね、あなたのクラスの清水さんから落書きするように指示されて、言われるがままに何度もやってしまった。って、相談してきたの。その時になって、生徒会室に北斗がスプレーを借りにきたことを思い出したわ」


"何度も"なんだ。
私は1度しか知らない。

やっぱり葉山くんが朝早く来て、消してくれていたのだろう。私に何も言わずに、私が傷つかない方法で穏便に終わらせようとしてくれていた。


「だから私は北斗に事実確認をして、前田先生に報告したわ。先生は佐野さんに伝えるべきか迷っていたけど、事前にあなたが相談して来なかったことから、清水さんへの注意のみで留めたみたい。そのことを隠しているみたいになって、ごめんね」


「…いえ、生徒会長が謝ることはひとつもないです」


前田先生も動いてくれていたのだ。


「たぶんそのせいもあって、清水さんは学校に来ていないのよね」


「……どうでしょう。連絡しても返事がなくて」


「連絡してるのね…私なら友達を止めるわ。でもあなたがそうしないのは、清水さんに私の知らない良いところがあるってことよね」


凛ちゃんのことは憎めない。でもこの気持ちはいつも人が集まる生徒会長のような人望ある者には伝わらないと思う。


「…私のせいでご迷惑をおかけしました」


「いいのよ、私が勝手にやったことだから。こちらこそあなたの許可もなくごめんね」