その手をぎゅっと掴めたら。


いつもは賑やかなクラスもテスト前は張り詰めた空気が漂う。休み時間でさえ参考書と向き合っている生徒が多く、日々取り合いの校庭にも人気がない。


大学への推薦は高校3年間の成績によって決まるのだから、必死になることも当然だろう。


先生の都合で理科の授業が自由時間となり、一斉にテスト勉強を始める中、葉山くんは慌てた様子もなく頬杖をついて窓の外を見ていた。


「葉山、ここ教えてくれないか」


クラスメートが言いにくそうに席まで歩いてくると、葉山くんは起き上がり差し出された問題集に目を向ける。


「いいよ」

「悪い!ここなんだけどさ、公式は分かるんだけど、こことここの間が意味分からなくて」

「あー、それは…ここに書いてもいい?」

「うん」


葉山くんは特に考える素振りを見せず、ペンを走らせている。昨晩、亜夜に聞かれて戸惑った私とは大違いだ。