笑いかけた方が場が和むとは分かっていたけれど、私は笑えなかった。代わりに素直な気持ちを口にする。
「…話してくれて、ありがとう」
「こちらこそ。聞いてくれて、ありがと」
もう一度私の髪に触れてから、葉山くんは近くの時計台を見上げた。
針は17時を指している。
英知くんとの約束の時刻だ。
駅の改札の外、時計台の下で待ち合わせをした。
女子中高生や女性が葉山くんに気付くと二度見をしてから、ゆっくりと立ち去っていく。隅にいるのに気付かれてしまうオーラの持ち主だ。
だけれど私もその視線には慣れてしまった。
そりゃぁ葉山くんのような素敵な人がいたら、みんな見るでしょう?モテ王子のあだ名は伊達じゃないのだ。つまりはそう、私の彼氏はとてもとても魅力的な人ってことだよね。


