その手をぎゅっと掴めたら。


その晩、さの喫茶のソファー席に座りながら亜夜に校外学習のことを伝える。


「虹ヶ丘かぁ。この辺ではメジャーなんだよね?今度、行こうよ」


「私も亜夜と行きたい!」


「1月の真奈の誕生日に行こうか。あ、ミルク入れてもいい?」


「砂糖でもミルクでもたくさん入れていいよ。ブラックは苦すぎ。それじゃぁ1月に行こうね!」


亜夜は私の淹れたコーヒーに砂糖とミルクを遠慮がちに入れる。おじいちゃんには申し訳ないけど、私も…。
お父さんはおじちゃんの息子にも関わらず、甘いカフェオレが好きだしなぁ。


「うん、美味い。まぁ周りの目とか気にせずにさ、北斗と楽しめばいいんじゃない。せっかくの機会だし、楽しまなきゃ損でしょ」


熱いコーヒーをゆっくり飲みながら亜夜は言う。


「でも同じ学校に彼女が居たら、普通は一緒に回るものなのかな?一応、学校行事だし、葉山くんがなんて思うのかな…とか」


「あー、真奈は葉山くんから誘われたいんだね」


「そうじゃないよ!」


耳につけている十字架のピアスを弄りながら、にやにやしている彼女の膝を叩く。