一呼吸置いた後、
じっと見つめていた私の目に映った、彼の、破顔。
大きな口を開けて、目を細めて、顔全体をぐちゃぐちゃにして葉山くんは笑った。
いつもの全てを包み込むような温かい笑い方ではなく、年相応のその笑顔に、本当の意味で彼に心許された気がした。
「そうくるかっ、あはははっ」
目元の涙を拭うような素振りを見せた葉山くんは、しばらく声に出して笑っていた。
とにかく葉山くんが笑ってくれたことが嬉しくて、つられて笑う。
暗い顔をして嘆くより、笑い合っていた方が絶対に明日は明るいはずだ。
「…ふぅ。喉がからからだよ」
適温になったココアを飲む。
喉から先がじんわりと温かくなる。
「君のコーヒーが飲みたいな…いつか、"さの喫茶"に行けるように頑張るから」
「うん。無理しない程度にね」
少しずつ、心の闇が溶けていけばいい。
焦る必要なんてひとつもないのだと、この時は思っていたーー。


