その手をぎゅっと掴めたら。


葉山くんは小さく頷いた。

でもその理由をすぐに口に出そうとはせず、困ったように私を見た。

聞かないで、と言われているようにも、助けてほしいと言われているようにも見えて、曖昧に笑うしかなかった。


「……俺さ、」



ほんの数秒、葉山くんは迷ったように視線を彷徨わせたが、また私の目を見て話し始める。




「友人を、見殺しにした」



抑揚なく淡々とした発言が、脳に突き刺さる。


返す言葉を探して口を開いたものの、そのまま停止した。


「警察や両親、精神科医は気にすることじゃない、君が悪いわけじゃない。何度もそう言って、誰も俺を責めやしなかったけど。その出来事が今も、俺の心を蝕むんだ」


「……うん」


やっと紡いだ言葉は小さすぎて葉山くんには届かなかった。


「過ちを犯した俺には幸せになる権利がなくて、君は別の誰かと生きるべきだと思うんだ。だから君とは、別れようって思った。身勝手だけど」


全てを諦めているかのような笑みに、胸が痛んだ。