その手をぎゅっと掴めたら。


さすがに強引に私を引っ張ることはせず、少し迷った葉山くんは声を上げた。



「母さん!母さん!」



え…。
私が驚いて葉山くんを見上げるのと同時に、家の中から駆け寄ってくる足音が聞こえた。



「北斗?あら、どうしたの!ずぶ濡れじゃない!」


「タオル持ってきて」


「分かったから早く入りなさい、風邪引いちゃうわ」



葉山くんのお母さんに今度は強引に手を引かれ、さすがに土足でお邪魔するわけにはいかないと、慌てて靴を脱いだ。


「シャワーを浴びなきゃ。こっちよ」


お母さんがそう言ってくれたけれど、どうしたらいいか分からなくて葉山くんを見る。

そこで気付いた。
葉山くんは私と同じくらいびしょ濡れで、真っ青な顔をしていた。


「私より、先に葉山くんを…」


自分のことで精一杯で、葉山くんが傘を差しているかを確認する余裕がなかった。


「俺は後で大丈夫だから」


そう言って笑いかけたくれた彼は、疲れた顔をしていたけれど、そこに冷たさは含まれていなかった。