「行くよ」
そう言って私の腕を掴んだまま葉山くんは歩き出した。
どこに行くの…そう心の中で問いかけているのに、声にはならない。
雨のせいか、寒さのせいか、痛みのせいか、言葉にする気力がなかった。
葉山くんに誘導されるがままに到着した先は、さっき来た場所だった。
そこで初めて私は抵抗した。
残っている力を振り絞り足に力を入れて、その場に踏み留まる。
「落ち着いたら送って行くから」
それでも葉山くんに捕まれた手は振り解くことが許されず、首を振る。
「君が嫌がることはしないから。頼むから、中に入って」
空いている方の手で玄関のドアを開けた葉山くんは、自身の家に入るように促した。
「…嫌。帰りたい」
ここで流されてはダメな気がした。
こんな状態で葉山くんの家にお邪魔するなんておかしすぎる。
やっと動いた頭が頑なに否定すると、葉山くんは困った顔をしていた。
同情は、いらない。


