その手をぎゅっと掴めたら。


ピーンポーン。

チャイムが響き、背筋を伸ばす。

インターフォンにカメラが設置されている。
良かった、制服を着てきて。
万が一、葉山くんのお母さんが出てきても息子と同じ学校の子だと一目で分かるはずだ。



「…開けるから、待ってて」


しかしインターフォン越しの声は、葉山くんのものだった。


「あ、はい」

私と認識したら居留守を使われるのではないかとためらっていたが、良かった…。
ゆっくり開かれた玄関のドアを見てそう安堵した。


「どうしたの」


黒いシャツとゆったりとしたパンツ姿で現れた。
サンダルを履いた葉山くんは後手にドアを閉めて、外まで出てきてくれた。


「よく家が分かったね」


その声に棘はないが、少し鼻声だ。


「突然押しかけてごめんなさい。生徒会長に案内してもらいました」


「そう。それより体調はもういいの?」


私のつま先から頭のてっぺんまで順番に彼の視線が注がれる。

彼の方こそ顔色が悪い。

涙袋が目立つ大きな目は輝きを失い、疲れているように見えた。


「私はすっかり元気です!葉山くん、学校に来ていないのでしょう。それが心配で…大丈夫かなって」


あっ、と。慌てて付け足す。


「友達として心配で!」


彼女面をしてはいけない。
未練があってもそこまで厚かましくはできないよね。