その手をぎゅっと掴めたら。


教室まで無言で葉山くんの後を追う。

長い足で颯爽と歩く葉山くんは私のためにその歩調を緩めることはせず、こちらも待ってと口にするわけでもない。なんとも微妙な関係だ。

教室に着けば既に部活を終え、教科書をうちわがわりにあおぐ生徒の話し声で賑やかだった。



「あ、葉山。おはよう」

「おはよ」


葉山くんは窓際の自席に着き、頬杖をついて窓の外を眺めている。私の方を振り返りもせず。


うん、全然付き合っている感じがしない。

いやいや突然、いちゃいちゃ?ラブラブな関係になっても困るので、今の距離感で十分です。


そもそも葉山くんって私のことをクラスメートとして顔くらいは見たことあると思っていても、名前を知っているのだろうか。


進級して4ヶ月が経つけれど
人の顔を覚えることが不得意な私にはまだ名前と顔が一致しない生徒がいるな…。

自己紹介、すれば良かったな。