その手をぎゅっと掴めたら。


亜夜が買ってきてくれた雑誌を捲りながら、手元に携帯電話を手繰り寄せる。


少し前にお見舞いに来てくれた父から無事にホテルに着いたという旨のメールが入っていた。説得して、明日のお昼には長野に帰るようにと新幹線のチケットを購入させた。

これ以上、誰かに迷惑はかけたくない。
亜夜にも毎日お見舞いに来てくれなくていいよと伝えたけれど、彼女は明日も明後日も、私が病室に居る限り訪ねてくると分かっているから、早く退院しなければと気合いを入れる。


明日、追加検査をしてその結果次第では最速で退院できるという。こればかりは頑丈に生んでくれた母に感謝だな。


雑誌のデート特集のページで手が止まる。
私にはもう縁のないページなのかな。


入院3日目。
もう涙は出なかった。