その手をぎゅっと掴めたら。


痛っ…。
起きあがろうとすると、身体に痛みが走った。


「寝てたなきゃダメ。階段から落ちたんだって?本当にドジなんだから…」


優しく目にかかった前髪を亜夜がはらってくれて、周囲を伺う。

すぐにそこが病院のベッドの上だと分かった。


前田先生と入れ替わりで女医さんがベッドに近付いてきた。


「気分は大丈夫?」

「はい…」

「友達の名前は分かる?落ちた時のことは思い出せる?」


「はい。階段から落ちたことは、はっきり覚えてます」


凛ちゃんはどうしただろうか。
散らかった図書室はどうなっただろうか。


病室に葉山くんの姿は、なかった。