その手をぎゅっと掴めたら。


どのような言葉をかけても凛ちゃんには届かない気がする。相手の心を開く話術も、一度こじれた関係を修復する術も私は、知らない。


「…凛ちゃんが私に話しかけてくれた時、とても嬉しかったの。友達になってくれて、ありがとう」


「はぁ?あんたのことを友達なんて思ったことはないわ。いつもひとりで可哀想だったから、同情で一緒に居てやったのに。その恩も忘れたわけ?」


「私は凛ちゃんに遠慮して、嫌なことを嫌とは口に出せずにいた。そんなの…友達ではないよね」


凛ちゃんだけが悪いわけじゃない。
私が、彼女と向き合うことを避けたのだ。
先に綻びを作ったのは私の方だ。


「はぁ?なに言ってんの、意味分からない」


「凛ちゃん?」


凛ちゃんは言葉の通り混乱しているのか、白い頬に涙が伝った。


「泣いてるの?」


ハッとしたように凛ちゃんは腕で目元を隠す。



「凛ちゃん…」


凛ちゃんの涙を初めて見た私も戸惑う。
笑った顔や怒った顔はよく見せてくれたけど、泣いたところなど一度も…。


彼女自身も驚いたようで、


「誰かに言ったら、殺すから!」

そう言い残して慌てて図書室を出て行った。



悲しくて泣いているのか、怒りによる涙なのかは分からないけれど、今、その理由を聞いてあげられるのは私しかいないと思ったら、

足が動いていた。