その手をぎゅっと掴めたら。



ーーバチンッ。


突然、響いた音。


葉山くん、なんでそんなに驚いた顔をするの?




「っ…、」


遅れてきた手首への痛み。



「ごめん!」



慌てたように葉山くんが大声を上げ、

その瞬間、理解した。



葉山くんへ伸ばした手は、振り払われたのだ。


強く、大きな音がするほどに、拒絶された。



「びっくりさせてごめん!」



前にもこんなことあったよね。

お金を返そうと触れた手を、振り払われたあの時より、2人の距離は縮んだと思っていた。

勝手に思い上がってただけかな?



「あ、私、前田先生に呼ばれているの。職員室行ってくるね」


早口で伝えて、廊下を駆け足で進む。


「待って、佐野!」


葉山くんの顔は見れなかった。

彼が私よりも痛い表情をしている気がしたから、見たくなかった。