その手をぎゅっと掴めたら。


その夜、帰りが遅くなると予告していた亜夜は日付が変わっても戻らなかった。

「泊まってもらってもいいんだからね?」そう言い残して出掛けた彼女は、私たちに気を遣っているのだと思う。

早く帰ってきて、と送ったメッセージには既読がつかない。



葉山くんからは無事に家に着いたと言う連絡が、お詫びと共に届いた。


「おじいちゃん…」

机の上にある祖父の写真を見る。


幼い頃からひとりで留守番をすることが多かった。母を早くに失くし、仕事が忙しい父は深夜まで家に戻らないことが日常だった。


それでも今日ほどに不安な夜はなかった。


ただの推測でしかないが、嫌な予感がして、考えれば考えるほど悪い方へ向かってしまう。

最悪な妄想だけが、脳を支配した。