葉山くんが立ち上がると形勢逆転。今度は私が身上げる側になる。
「まぁ我慢もするけど、ある程度は受け入れてもらわないとね」
私だけに聞こえるボリュームで葉山くんは言う。
なんだろう。
この甘い雰囲気。
私たちは恋人同士だと宣言はしても、2人の間に甘ったるい空気が流れたことはない。
「……次の土曜日、"さの喫茶"にお邪魔した時さぁ」
「うん?」
「君の唇をいただくね」
「は?」
前後の脈絡が成り立たなくて思わず眉間に皺を寄せてしまった。
「な、なんで?」
「それくらいのご褒美がないと、頑張れないから」
「なにを頑張るの?」
「秘密」
唇に人差し指を当てた彼はふっと笑った。
その秘密の中身を何度と問うだけれど、葉山くんは頑なに口を閉ざして教えてはくれなかった。


