その手をぎゅっと掴めたら。


伸ばされた手を掴もうと、こちらも手を伸ばす。

恋人同士なんだし、手を繋ぐくらい良いよね?

勇気を出した。

私にしては勇気を出した方なのだ。


でも、

「おはよう」

その言葉と共に、彼の手はさっと引っ込められた。


空を掴んだ私の手は居場所を探すように不自然にさまよう。


「…おはよう」


え?今、手を繋ぐ流れでなかった?
私の早とちり?


「おはようのキスでもする?」


混乱しているところで更に混乱させる言葉が降ってくる。

キス?それは手を繋ぐよりもハードルが高すぎやしませんか?


「冗談、だよね」

「…俺は、佐野とそういうこと、したいと思ってるよ」


少し掠れ気味の彼の声が届き、心臓が高鳴る。


立ち尽くしたままの私を見上げて彼は微笑んだ。