その手をぎゅっと掴めたら。


7時はさすがに早すぎたようで、部活の朝練の生徒がちらほら前を通るだけだ。


当たり前だけれど私は葉山くんのことをなにも知らなくて、彼がどのようなルートでやってきて何時に登校して、何時に帰るのか、部活には入っているのか。なにひとつ知らない。

それなのに告白したとは、失礼にも程がある。


盛大な溜息をついて、トートバッグをギュッと握りしめる。体操着しか入っていないそのバックが妙に重く感じる。罪悪感をどう拭えばいいのだろう。



「あ、」

7時15分。
最寄駅のある方角から、葉山北斗くんが現れた。

朝、早いんだ。


「あの、葉山くん」


俯き加減で歩く彼は私に気付くことなく、通り過ぎようとして慌てて呼び止める。

良かった、話しかける勇気は出た。後はーー


「葉山くん。昨日のこと、返事の意味を聞いてもよろしいでしょうか」


人影はなく校門には私と葉山くんの2人だけだった。