その手をぎゅっと掴めたら。


月曜日。

いつもと同じ時間に登校すると、葉山くんは机に突っ伏していた。太陽の光を浴びているその柔らかい髪に触れたい。

なんてことも毎朝、思う。

へ、変態だよね…。


自分に叱咤しながら視線を動かせば
珍しく雪ちゃんも登校していて、自席でシャーペンを走らせている。


「あ、真奈。おはよう」

「おはよう。今日は早いね?」


足音に気付いた雪ちゃんは以前と同じように挨拶をしてくれた。


「数学の課題、机の中に置き忘れちゃってさ。今、やってる。今日、提出だしね」

少し顔を歪めて嫌そうに言う。
艶やかな髪は肩下くらいで、ふんわりとした前髪は彼女の愛くるしさを引き立てる。


「大丈夫?私の見せようか?」

「あと少しで終わるからへーき。というか、モテ王子って、来るの早いんだね」

「うん。何時に来てた?」


机の落書きの一件があってから、葉山くんは朝早く登校するようになってしまった。

申し訳なくて私も早く来ようとしたが、亜夜に反対されている。私が早めに登校したら、葉山くんはそれより早く登校するだろうというのが彼女の意見だ。

もしかしたら今朝、私の机の上が綺麗なのは葉山くんが既に落書きを消してくれたからかもしれない。真相は分からないけれど。


「私が1時間前に来た時はもうそこで寝てたよ?」

「そんなに早く…」

「落書きの見張り?」

「…雪ちゃん、知ってたの?」

「まぁ、凛ちゃんが彼女を慕う1年生にやらせたって言ってたからね」


ああ、聞きたくなかったな。
友達なんて些細なことで失ったり、敵になってしまうのだ。