その手をぎゅっと掴めたら。


英知くんは葉山くんのほうに身を乗り出して、言った。


「………志望校はテニスの強豪校で、推薦で行く予定です。本当は今日、葉山さんに会いに来ました」


「……」


私と先生は、葉山くんと英知くんを交互に見る。

なぜ?会いに来るならこんな形でなくても良かったはず。久しぶりに会ったような再会の仕方だったし、会いにくい理由でもあったのかな?


「今日は受験生のために時間を取ってるんだ。悪いけど、帰ってくれるかな」


葉山くんは会いに来た意図を聞こうとせず、彼を拒んだ。


「…葉山さん、あなたはいつまでそうしてるつもりですか?成績優秀、スポーツ万能なあなたが…あなたも分かっているは…」


「君が帰らないのなら、僕が出て行く。他の受験生の邪魔だからね」


珍しく葉山くんが相手の言葉を遮った。

そしてため息と共にさっと立ち上がり、前田先生に「少し休憩してきます」と伝えた。


「お、おう」と、先生が気まずそうに返す。


私は葉山くんに目も合わせてもらえない英知くんをそっと見た。やるせなさに唇をきつく結んでいる。

何故だろう。いつもの葉山くんだったら、丁寧に話を聞いてあげるはずだ。彼らの間になにかあったのだろうか。