その手をぎゅっと掴めたら。


昔の葉山くんのことを知る中学生か…。
羨ましいな。

「北斗さんのところに質問しに行ってもいいですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます、後で行きます」


会釈してトレーを戻しに向かった彼を見送り、葉山くんを見ると、コーヒーの空き缶をぼんやりと眺めていた。


「葉山くん?」

「冷めちゃったね、早く食べよう」

「うん」


なんでだろう。
なんとなく、英知くんのことを聞いてはいけない気がした。過去の己を知る人には会いたくないという感情なら私にもある。中学時代の惨めな私のことを知る人と、葉山くんを絶対に会わせたくない。

気持ちは分かるよ。
でも全く触れないのも不自然な気がして、言葉を選んで質問する。


「彼、何年生?」

「3年生」

「そうなの?小柄だから1年生かと思った…」

「昔から小さかったよ。本人のコンプレックスだから、言わないでやって」

「さすがに言えないね」


当たり障りのない会話。
誰にだって触れられたくない自分もある。
だから話したくなったら話してね。