その手をぎゅっと掴めたら。



ーーそして土曜日。

中学生向けの学校相談会の日だ。

巻き添いにしてしまった葉山くんと一緒のため、私は結構、浮かれている。


イベント事は大嫌いなはずなのに、葉山くんが居るだけで心が躍ってしまう。


大教室で担任の前田先生が我が校の校風や授業カリキュラムを簡単に説明した後、昼食を食べてからそれぞれの教室で中学生とその保護者からの相談会だ。


難しいことは前田先生が答え、学校生活の様子などは私と葉山くんが答えて、より中学生に伝わりやすくする狙いがあるようだ。

後、子供は嘘が下手だしね。

でも部活にも入らずに、青春を謳歌していると言い難い私や葉山くんで良かったのだろうか。



食堂では中学生にカレーライスとラーメンが振る舞われ、私と葉山くんは右端のテーブルに座った。


中学生も受験前だからか静かに席に着き、食事をとっている。親子連れが多いが、友達同士の参加者もいた。


葉山くんはいつものブラックコーヒーを飲みながらラーメンを頬張っていた。前田先生のおごりだ。

私たちは滅多に食堂に来ないので、お昼に焼きそばパン以外の食事をしている葉山くんは新鮮だ。


「ん?食べる?」


カレーライスを選んだ私がラーメンの味見したいと思ったのか、トレーごとこちらに寄越した。


「え?いいの?」

「俺もカレー食べたい」

「うん、どうぞ」


トレーを差し出したが食べかけのカレーでいいのか少し戸惑う。少しだけ恥じらいの気持ちを感じたが、葉山くんはさっと使いかけのスプーンに手を伸ばして、躊躇いなくカレーを口に入れた。


「ん、美味しい。もう一口いい?」


こくこくと頷く。

待ってーーあの、これって間接キスだよね?