悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~

 夜会から数日後。
 状況も落ち着いたため、今日から学園に復帰することに。
 私は自室にある鏡の前に立ち、数日ぶりに袖を通した制服姿の自分を見ていた。

 かなり久しぶりの制服なので、ちょっと新鮮味あふれている。
 今日からは学園だけでなく、メイドカフェにも復帰する予定だ。

「いまだに夢かな? って思っちゃう時があるわ。転生した時の自分ではまったく想像できないくらいの幸せに包まれている」
 私はそう言うと鏡に映る自分に触れた。
 触れている手の薬指には、ピンクとブルーの石がはめ込まれた指輪がうかがえる。

 アイザックからの贈り物だ。
 双方の国で婚約の話は進んでいるけれど、まだ正式な婚約者にはなっていない。
 書面で婚約を交わしてからグランツ国で婚約の儀式を行なって初めて認められる。

 そのため、私は今年の冬にグランツ国へ渡航することになっていた。

 ──アイザックの生まれた国に早く行ってみたいわ。彼が見てきたものを見てみたい。

 彼のことを考えたら、ますます会いたくてたまらなくなった。
 もうすぐ迎えにきてくれる時間だから、あとちょっとで会えるのに。

「お嬢様」
 部屋をノックする音が聞こえたので返事をすると、扉が開き現れたのはメイドだった。
 彼女は穏やかに微笑むと口を開く。

「アイザック様がお迎えにいらっしゃっておりますわ。玄関ホールでお待ちになるとおっしゃっています」
「わかったわ。教えてくれてありがとう」
 アイザックが来ている!
 はやる気持ちを抑えることなく、鞄を持ち急いで部屋を出て玄関へ向かった。

 階段を下りていく途中で、ホールにいたアイザックが顔を上げたので視線が交わる。
 透き通るような海色の瞳は、私を捉えると優しく細められた。

 アイザックの笑顔を見るだけでこんなにも胸が締めつけられるなんて。
 朝から幸せすぎて泣きそうになってしまう。
 つい数日前までこの私には、悪役令嬢のシナリオによる断罪フラグが立っていたのに。

「おはよう」
 アイザックの前に立つと挨拶をした。
 ちなみに彼の薬指にも私と同じ指輪がはめられている。

「おはよう、シルフィ」
「ごめんね。待たせて」
「全然。今来たところだから」
 そう言うと、アイザックはじっと私のことを見つめた。
 もしかして顔になにかゴミでもついているのかな? さっき鏡を見た時にはとくに気にならなかったんだけれど。

「どうしたの?」
「今日もかわいいなぁと思って」
「アイザックっ!」
 私はアイザックの腕を軽く叩くと彼は喉で笑った。