「謝罪するのなら最後のチャンスですよ?」
マイカが声をかけると、生徒たちはいっせいに深く頭を下げだす。
「申し訳ありません、シルフィ様。私たち、エクレール様にお金を積まれて虚偽の証言を行ないました。階段を偶然通ったのではなく、事前に呼ばれて集められていたんです。シルフィ様はエクレール様を突き飛ばしてなんていません」
ぞくりと背筋に寒いものが走った。
事前に集められたということは、私が職員室付近の階段を使用するのを、知っていたということだ。
ハーノルト先生までエクレール様の息がかかっていたってこと?
最近忘れっぽいのではなく、ベロニカに資料を渡し忘れたのは故意だったのかもしれない。
「嘘ですわ、殿下。きっとお金を握らせて虚偽の報告をさせたのですわ。マイカは私のことが嫌いだから貶めようとしているだけです。以前、私がお友達になろうと声をかけた時も拒絶しましたし」
エクレール様は涙を浮かべると、殿下の胸に飛び込んだ。
殿下は痛ましい顔で彼女を守るように抱きしめる。
「たしかにエクレールの言うとおりだ。マイカはオルニス商会の娘。金で人を操ることなどたやすいだろう」
「嫌ですわ。こちらは全校生徒に対して情報提供料をお支払いするという約束で、皆さんから階段での事件に関して情報を募っただけ。聞きましたわよ。ひとりあたりたった百ルギだったんですって? 安すぎて哀れに思いましたわ。そんなはした金で他人を操り虚偽の証言をさせ、シルフィ様の人生を棒に振らせるなんて」
「たった百ルギ……」
会場内にいた貴族のひとりがぽつりとつぶやいた。
百ルギは日本円に換算すると百万円くらいの価値だ。ひとり百万円で虚偽の証言をさせていたなんて。
貴族の中には事業が失敗したなどの理由から金銭に困っている家があるため、もしかしたらその弱みに付け込んだのかもしれない。なんて非道なの。
「もしかして、伯爵家はひとりあたり百ルギしか出せなかったんですか?」
マイカがクスクスと笑いながらエクレール様を見ると、エクレール様が眉間に深くしわを寄せて怒号を飛ばした。
「なんですって? ラバーチェ家を侮辱しないで。四大侯爵なのよ」
「元でしょ。どうでもいいわ。私、一般庶民だし。家の借金で困っている子たちの弱みに付け込んだなら、たった百ルギ程度じゃなくて全員の借金くらい払ってあげたらいいのに」
「あんた、まさか……!」
マイカは不敵な笑いを浮かべる。
