……なんだ、知ってたのか。なんとかあの話題をさっさと終わらせようと思っていたけど、どうやらそうもいかない様子だ。

 昨日結局レグルスはこの屋敷に来たのだ。電話で断ったにも関わらず。ただひとつ良かったのはここに来たのは来たが、私に会わずに帰って行った。

 あの大輪の花束と、ご丁寧にもメッセージカード付きで。そのメッセージには”明日は元気な姿で会えることを願っている”とかなんとか書かれていた。

 こんな態度取られたことって今までに一度たりとあっただろうか? 自分の記憶を遡ってみても、私がレグルスに指示したこと以上のことをしたことが未だかつてあっただろうか? いや、ない。ないと思う。覚えてないってことは絶対してない。

 レグルスの突然の方向転換とも取れる態度と、この溺愛されてるっぽい感じ……怖くない?

 マジで。真剣に。


「スピカ様、ひとつお願いがあるのですが、あの花を一輪いただいてもよろしいでしょうか?」

「ええもちろん! 一輪と言わず全て持っていってもいいのよ!」


 遠慮はいらない。むしろ持って行って。部屋の中に充満する花の香りを嗅いでいると、同時にレグルスの顔が脳裏に浮かぶからやめて欲しかったのだ。


「あははっ、そんなにいりません。それに一輪欲しいと言ったのはスピカ様のここに挿そうと思っただけですので」


 そう言ってコメットは私の耳少ししたあたりを指差した。