「おはよう、スピカ」


 にこやかにそう挨拶をしながら車から降りたばかりの私の手を取り、甲にキスをする。

 彼は突き抜けるように金色に輝く髪がよく似合う、レグルスという青年。クラスメイトでもあり幼馴染でもある私の婚約者殿。


「おはよう、レグルス。毎朝わざわざ門の前で私を待ち伏せしなくてもいいのよ?」

「ははっ、よく言うな。待っていなければ怒るくせ……いてっ」


「コホン」と咳払いをしながら、レグルスの手をパシンと叩く。


(レグルスの欠点は単細胞で女性の扱いをわかっていないところが難点だわ)


 だから私はいつもこのようにレグルスを指導しなければならない。


(だって彼は私の将来のパートナーとなる相手。私の隣に立っても恥ずかしくないような完璧なパートナーになってもらわなくては)


「いいんだ。俺がスピカがクラスに来るまで待てないだけなのだから」

「そう、そこまで言うのであれば仕方がないわね」


 正しいテンプレートを言い終えたレグルスに満足をした私は、再び笑顔を振りまきながら、差し出されたレグルスの腕を取ろうと手を添えた、その時だった。