まぁ、確かに。私の中に沸き起こっていた感情は全て不満だったもんね。なんでか分かんないけど。
 この前世の記憶が蘇るまで私は私じゃないみたいだった。だからすごく不思議な気分だ。


「どっ、どうか、クビにだけはしないで下さい!」

「えー!」


 なんでそんな話になるかな!?

 私が目を丸くして驚いていると、そういえば私は使用人達にもかなり不満があったためかなりの頻度で取っ替え引っ替えしていたことを思い出した。

 なんか、前世の記憶が蘇ったせいで、今世の記憶がどこか曖昧になってる。いや、覚えてるけど時系列がバラバラと言うか、最近の事もなんだか最近の事のような気がしないと言うか……。

 そんな風に思っていると、無言に耐えかねたのか、コメットはさらにこう嘆く。


「私ちゃんと働きますし、家には病気の父もいて下に二人も幼い兄弟がいるため、家族は私が頼りなんです……!」

「えっ、そうなの?」


 それってコメットが家族の大黒柱的な?


「それ大変だね……なんていうか、うちで頑張って働いて、稼いでね」


 お給料のことは執事が管理しているし、もちろん取り決めるのは父親だ。だから実際いくらなのかは知らないけど、うちは公爵家。家柄はいいから、使用人とはいえ、結構お給料が良いはずだ。

 そんな風に人の給料について分析している時、コメットの動きが止まっていることに気がついた。さっきまで慌てた様子でバタバタと手を振ってテンパっていたのに。